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疼痛ゼロの日2017リハビリシンポジウム雑感


~「疼痛ゼロの日2017リハビリシンポジウム」を開催して~

2017年11月11日、NPO法人ペイン・ヘルスケア・ネットワークによる専門職向けイベント、「疼痛ゼロの日2017リハビリシンポジウム」が開催されました。20年遅れているといわれているわが国の慢性的な痛みの治療に危機感を感じ、いち早く海外のガイドラインを病院に導入しリハビリテーション技術とコラボしたメソッドを考案、専門職のみならず一般の方へ慢性的な痛みの啓蒙活動を続ける同社。その代表理事・江原弘之が、イベントや今後の慢性疼痛のリハビリテーションについて語りました。


「リハビリシンポジウム開催のきっかけ」

 はじめまして。私は理学療法士でNPO法人ペイン・ヘルスケア・ネットワークの代表理事 をしています、江原弘之です。普段は病院で慢性的な痛みの患者さんにリハビリテーションを行っています。リハビリ場面において慢性的な痛みを訴えてくる患者さんは多いと思 いますが、皆さんはどのように対応していますか?患部をマッサージしますか?安静を促 しますか?実はどちらも間違い。慢性的に痛い場合は、一見痛みに悪そうな「体を動かし てみる」ことが、効果的な方法なのです。私は理学療法士という国家資格を持ったセラピストでもありますが、実はこのことは日本の医療職、リハビリ職の中で周知されているとはいいがたい事実として存在します。今回のシンポジウムはまずリハビリ業界の認識を変えていくために企画しました。参加者は理学療法士が中心でしたが、養成校学生、鍼灸師、養成校教員、医師など幅広い医療職と学生さんが集まりました。開会のあいさつの中で「参加者の皆さんは同志です」と申し上げました。そのくらい強いつながりを感じていました。 



 「実はみんな悩んでいて、相談できるところがない」

シンポジウムは30分の講演を4っと質疑応答、パネルディスカッションの構成にしました。シンポジストには、私の他に、患者代表として難治性疼痛患者支援協会・代表理事の若園和朗氏、医師代表として西鶴間メディカルクリニック理事長・中西一浩先生を、そして参議院議員で理学療法士の山口和之先生にお願いし、多角的に慢性的な痛みのリハビリについ ての意見交換ができるようにしました。個人的には、慢性疼痛の臨床にいる理学療法士よりも、普段痛みを訴える患者さんや利用者さんに対してどうしたらいいか対応できず困っているセラピストに来てほしいと思いました。その予想は的中して、介護分野のセラピストの参加が多く、実はみんなひそかに慢性疼痛のリハビリに悩んでいたのだと、手ごたえ を感じました。


「SNSと社会活動 社会が変わらないと意味がない」 

今回NPO設立後の最初のイベントで、集客や当日の運営など手探りで進めたため緊張し、おなかが痛い日が続きました。開催するのは簡単だけど参加者がゼロではせっかくの正しい情報も伝わりません。参加者募集や、それ以上の情報の広がりを期待して今回はSNSを利用した情報拡散を積極的に行いました。開催日までは、TwitterでのリツイートやFacebookで弊社Facebookページをシェアしスクリーンショットした画面を提示するとステッカーをプレゼントする企画を行いました。Twitterを中心にリツイートやシェアはかなり増えましたが、なぜか当日スクショ画面を申告してくれる参加者がおらずステッカーは大 分余ってしまいました(笑)。

当日会場では、特別に制作したSNSパネルを使った記念撮影を行いSNSにアップした方にはオリジナル缶パッジプレゼントを行いました。これは非常に好評で多くの方にご参加いただきました。



「難治性疼痛協会代表理事と患者家族と」 

講演は難治性疼痛患者支援協会・ぐっどばいべインの代表理事、若園和朗氏より始まりました。講演のポイントは患者側から見た痛み対策・リハビリと痛み患者を支援する団体の代表としてみた慢性痛医療の2つの視点があったように思います。

よい医療者と巡り合えることで救われる患者さんもいれば、医療者から心無い言葉をかけられ悪化したり、適切でない治療が続けられ改善しなかったりする患者さんもまだまだは多いと思います。神経障害性疼痛のCRPS、脊髄損傷の痛み、有名人もかかったことで話題となった線維筋痛症などを例に出されていました。若園氏いわく、制度や教育が追い付いていない我が国においてはシンポジウムの参加者は慢性痛リハビリのパイオニアである、と言っていらっしゃいました。現場にいる我々セラピストが考えや行動を変えていくことが末端から慢性痛リハビリを変えていくことになると私も聞いていて感じました。人口に対する痛みセンターの数からアジア最貧国ともいわれ、診療システムが世界に遅れている日本の慢性疼痛治療だけど、諸外国に追い付くだけでなく日本人に合ったもの構築することが重要であると、数々の情報や動画などを引用しわかりやすく説明されていました。患者家族の立場で語られた若園氏の経験談は、参加者の心に響いたと思います。



 「痛みを診る医師」

 シンポジスト2番目は西鶴間メディカルクリニック中西一浩理事長。中西先生は元々大学病院麻酔科の教授で、痛み治療を行っていました。しかし大学では痛み治療に必要な「学際的」な連携が取りにくく、治療を有意義にするためにペインクリニックを開院したそうです。中西先生のお話は、国際疼痛学会での痛みの定義(痛みは不快な情動体験)などの痛みの基礎的な事項の紹介から始まりましたが、身体的な問題以外は心の問題としか説明されていないことを心配していました。慢性痛は時間とともに様相が変化し、適切な治療が時期で異なることや、早期治療の重要性、機械的要因には運動学的アプローチが必要と仰っていました。

またこころの問題とされがちな心理面の問題をEQ-5D、恐怖回避傾向モデルで説明し理学療法士の介入の必要性を訴えていました。これも我々にとっては本当に心強いご意見です。

廃用症候群や回避行動に対しては運動療法や理学療法が必要であると解釈できます。
中西先生のような痛みへのリハビリを理解し実践できる医師が増えていくことも重要なことと思いました。



「痛みのリハビリの実践」

3番目は私江原が担当しました。私の慢性疼痛との出会いはNTT東日本関東病院でのCRPS など難治性疼痛患者のリハビリを担当したことがきっかけです。「痛みを治そうとするリハビリではなく、リハビリで体の機能や生活を改善することが痛みの改善にもつながる」ことを、臨床を通じて経験し、今では慢性疼痛のリハビリはリハビリテーションの本質そのものであると感じています。それに気づいてから、どんな慢性疼痛患者さんでものリハビリのポイントがあると気づき、患者さんがよくなることが増えていきました。慢性疼痛は身体機能障害・心理行動障害・脳機能障害が絡み合った複雑な病態になります。生物心理社会的モデルをもとに評価を進めますが、講演ではまずは痛みの訴えから筋骨格系の痛みか神経やそれ以外の悪循環の痛みなのか、簡単に見分ける判別方法をお伝えしました。また慢性疼痛のリハビリで具体的に何をしたらよいかわからないとよく質問されるので、評価表や症例を提示し、侵害受容性疼痛、神経障害性疼痛、慢性疼痛症候群に対して実施することを身体・心理行動面・脳機能のデータをよりどころにして、イメージしやすくお伝えしました。患者さんの痛みにとらわれた思考を運動療法で変えていく過程は認知行動療法に似ていて、運動療法を共通言語にしたマネジメントが重要であるとまとめました。


「国会議員が見た痛み」

山口和之先生はまだお会いしたことがない中、若園氏を通じて講演のオファーを出しご快諾いただきました。まだ設立したてのNPOの活動にご協力を賜り大変感謝しております。ご挨拶させていただいたときに、熱い思いを持つ同じ理学療法士の大先輩であることをビシビシ感じまして、ご講演でもそれを強く感じました。山口先生がおっしゃった「慢性痛の治療は世界から遅れていると聞いたが、このシンポジウムの内容で世界から遅れているのか?と疑った。患者さんがペインクリニックに行くのは最後の最後だと思っていたが、勉強不足だった。」が印象に残りました。先生の療法士としての経験では、視床痛、カウザルギー、幻肢痛に苦労したことだそう。これは私も同感でした。

東北地方へ療法士をリクルートする話、がんリハ研修会の話、リハビリ関連立法の話など山口先生の苦労を交えながら、形になってきている慢性疼痛の治療・リハビリテーションを政治に反映し形にしていく必要があると応援していただきました。特にガイドライン作成を強調されていました。国の予算や教育プログラムの現状を提示しながら、教育の普及 など課題も満載だが広めたらすごいことになる!某有名政治家も動くぞ!と「国を動かす」というスケールの大きい話題を具体的な数字を提示しつつ参加者にわかりやすく伝えていただきました。私たちも鼓舞されてしまうような力強いお話が多かったです。 

 


「質問コーナー・パネルディスカッション」 

とても多くのご質問を頂きありがとうございました。時間の関係上、各2問ずつ答えるおとしかできませんでした。残りは当社ホームページ、ブログの中で今後ご回答させていただきます。パネルディスカッションでは大きな声では言えない話も一部飛び交い、笑いも起こりながら和気あいあいと進みました。

 

 

 

 

 

 

「まとめと今後」

理学療法、リハビリ関連学会でも慢性疼痛関連の演題が増えていたり、大学病院やペインコンソーシアムというリハを含めた7学会が協力して、慢性疼痛の研究を進めています。

私が慢性疼痛リハビリ始めたころより、知見が増え情報も得やすくなっていると感じます。私たちNPO法人も正しい情報発信を続けて、患者さん、医療者、そして痛みへの認識を社会から変えていく活動を続けていきたいと思います。61名という多くの方にご参加いただき大変感謝しております。事後アンケートでもとても好意的なご意見を数多くいただきました。中でもリハ職種向け慢性疼痛の技術講習会の開催希望が多く、検討しています。

 

また同様のシンポジウムや一般向けの公開講座は毎年開催の予定で進めております。

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